11. 『ありがとう』は行為を受け取る言葉

 人に何かをしていただいた時や、ものを頂いた時など一番よく使われる感謝の言葉に『ありがとう』がありますが、実は『ありがとう』は、ありがとうと言って人の好意をありがたく受け取る言葉なのです。
 正式には『ありがたく頂戴いたします』または『ありがたく承ります』『ありがたく存じます』等、その事実を受け取るために使うお礼を表す用語の実は枕詞なのです。下句をつけて使うのが正式な使い方なのですが、今では、感謝を表す言葉と感謝を返す意味の代わりに余りにも『ありがとう』が容易く使われすぎているような気がします。
 人から何らかの行為を受けると、心の中に負債が生まれてきます。その負債をしっかり受け止めることが大切なのです。それなのに『ありがとう』と言って、返してしまっては、人の行為を無にしてしまい心の負債を打ち消す言葉となってしまいます。
 人からの行為を心の負債として受け取ることが大切であり、相手から見たらそれが徳積になった方が良いと思われます。
 よって、『ありがとう』はお礼を表す言葉ではなく、行為を受け取る言葉として使い、お返し言葉として使っては、人の行為を無にすることになってしまいます。
 いろんな場合があると思われますが、一つの考え方として、こんな考え方を提案してみたいと思います。
 これからは、受け取る言葉として考えてみてはいかがでしょうか。人の好意は温かく美しいものです。それを受けた人が、また次の人にしてあげる『ありがとう』の連鎖は、心の連鎖です。リレーのバトンのようなもの、受け取ることから始まるのです。
 そして、『ありがとう』と言われる人になりましょう。『ありがとう』と言い続けるよりも、『ありがとう』と言われ続けることの方が、最も大切なのです。
 だからこそ、『ありがとう』という言葉で、人の温かい心を大切に受け取り、そしてまた誰かに『ありがとう』と言われる。
 そんな本当の『ありがとう』の使い方ができる世の中が来たら、どんなに素晴らしいことでしょうか。